日本国内では、再生医療は「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針」(平成25年厚生労働省告示第 317号)の指針などはあったものの法律に基づいた明確な規制立法がありませんでした。
そこで,再生医療の研究開発および提供,ならびに普及の促進を図るため,「再生医療を国民が迅速かつ安全に受けられるようにするための施策の総合的な推進に関する法律」(以下、「再生医療推進法」)が議員立法にヒト細胞・組織を利用した毛髪再生医療の基礎と臨床応用HAB/NDRIからのヒト組織供給体制で2013年4月26日に成立(5月10日公布)しました。
この再生医療推進法を受け,経済産業省,厚生労働省,文部科学省の3省が一体となり,再生医療 がより早く安全に提供されるべく、より具体的な内容を定めた「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(以下,「医 薬品医療機器等法」)および「再生医療等の安全性 の確保等に関する法律」(以下,「再生医療等安全 性確保法」)の2法が2014年11月25日に施行されるに至りました。
医薬品医療機器等法では,旧薬事法の「医薬品」、「医療機器」に加えて「再生医療等製品」というカテゴリーが新たに設けられたことが大きな特徴のひとつである.これは,細胞を使用する再生医療では品質のバラツキが大きいことなどを考慮して,従来の「医薬品」や「医療機器」とは別に,その特性に合った規制を設けたものである.
さらに,本法の特徴は,初期の治験(第Ⅰ相や第 Ⅱ相)で安全性が確認され,さらに有効性が推定される場合に,条件および期限付きで承認される制度を設けたことである.今後,日本で再生医療等製品を開発する場合,早ければ2年ほどの短期 間で市場に送り出すことが可能となり,これまで 10年ほどかかっていた実用化のプロセスが大幅に短縮されることになります。
これまで,米国や韓国では熱傷治療用の皮膚製品,関節障害治療用の軟骨製品など10品目以上が製品化されているのに対して,日本は2品目と出遅れていたが,法律の施行に合わせ新たに2品目が承認されました。
承認までの期間が大幅に短縮されることで,先行投資も抑制できるため,この制度を利用して早期承認を目指す企業も増えると予想されます。
一方,再生医療等安全性確保法は,医師法下で行われる医療行為に対する規制です。この法規の制定の背景には,安全性や有効性が十分に確認されていない細胞治療などが再生医療として提供され,重篤な医療事故が発生した事例が報告されたことなどが背景にあります。これらは自由診療として提供され,規制当局が実態を十分に把握することが困難でした。
ヒトへ投与する細胞加工物を一定の規格・規定で製造管理する工程は,医療行為とは異なる性質の業務であり,医療機関においては大きな負荷がかかることなどが推測されます。
このため新たに本法が導入された経緯があります。本法には規制強化と規制緩和の面から2つ大きな特徴があります。
まず規制強化の面からは,各医療機関が自由診療や臨床研究として再生医療を実施するには,厚生労働大臣へ届け出る前に,医師や法律専門家らで構成される「認定再生医療等委員会(国の認定が必要)」による審査と提供計画の厚生労働大臣への 届出が義務づけられました。
再生医療の実施に当たり,提供される細胞のリスクに応じて,ES細胞やiPS細胞を利用する高リスクと考えられるものは 第1種再生医療、体性幹細胞など中リスクの 場合は第2種再生医療、リスクの低いもの(体細胞を加工など)は第3種再生医療として3種類に分類されて審査を受ける必要があります。
とくに 第1種および第2種再生医療等は、高度な審査能力と第三者性を有する「特定認定再生医療等委員会」での審査が必要とされます。毛髪に扱われる幹細胞の採取、抽出、移植は、この第3種再生医療に当たります。
また,無届出の実施や虚偽の届出を行った場合,これまでと違い、罰則が科されます。 次に規制緩和の面では,医療行為の一部として医療機関内で行うことが義務づけられていた細胞の培養加工を,企業などの外部機関に委託できるようにした点です。
細胞の培養加工や細胞培養 加工施設(CPC)の運営にノウハウを有する企業などが,細胞加工物の製造を請負うことで品質の 向上が期待され,再生医療の安全性を高めることに繋がると考えられます。
すでに,複数の企業が細 胞培養加工施設(CPC)の認可を受けて,細胞培養加工業の事業化に乗り出しており,新しいビジネスの創出も始まっています。
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