日本国内では,自家培養毛包細胞移植による脱毛・薄毛治療のヒト臨床試験はこれまで実施されていません。その理由のひとつに、日本ではヒトの細胞の入手が簡単に入手できず、ヒトの細胞を使った基礎的な研究が遅れているためです。
実験動物で使用されるマウスなどの毛包はヒトと基本的には同じ構造をしていますが、ヒトの毛包は、男性ホルモンの感受性や増殖速度など異なる点も多く、臨床試験に進むうえでヒト細胞を用いて検討する必要があります。
欧米では基礎研究・臨床研究、いずれにも利用できるヒト組織を提供する仕組みが存在します。このため、資生堂リサーチセンターでは米国の臓器移植ネットワークからヒトの皮膚組織を入手してヒト毛髪再生に関する基礎研究を進めています。
これらから提供された組織、細胞を利用することができ、細胞の調製方法など一定の技術レベルを獲得したと考えられます。その臨床応用をみすえて、海外のベンチャー企業との共同研究を進めています。
共同研究の技術は科学的根拠に基づいて、かつ安全性の第Ⅰ相試験が最低限終了し、安全性が示されている技術であることです。この観点から、カナダのベチャー企業であるレプリセル社がもち合わせた技術に着目し、共同で臨床応用に向けた研究開発を進めました。
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RSMP vol.6 no.1, 91—99, Jan 2016
ヒト細胞・組織を利用した毛髪再生医療の基礎抜粋